かぜとその仲間の病気
インフルエンザ
症状と合併症
突然の高熱で発症して、頑固な咳や鼻水、鼻づまりなどの呼吸器症状に加えて、筋肉痛・関節痛、全身倦怠感が見らます。また、小児は大人と比べて、屁熱が高く、腹痛や嘔吐などの消化器症状を伴うことが多いです。しかしながら、初診時は、発熱以外の症状がない場合や、咽頭発赤も見られないこともあります。
合併症ですが、一番多いのは中耳炎と言われています。その他、咽頭炎、気管支炎、肺炎などです。熱性けいれんも多く、心筋炎や、インフルエンザ脳症などの生命の危機を伴う合併症もあります。
インフルエンザ脳炎・脳症
日本では、インフルエンザ脳炎・脳症が深刻な問題となっています。鹿児島でも毎年亡くなっている子どもさんがいますし、全国では約100名の小児は死亡し、ほぼ同じ数の小児が命はなんとか取り留めたけど後遺症に悩んでいます。原因はいまのところ分かっていません。
突然の高熱で発症し、1~2日の内にけいれん重積から昏睡状態などさまざまな意識障害をおこして、短期間のうちに、全身状態が悪くなり、死に至ることがあります。
解熱剤について
現在小児科では、ほとんどがアセトアミノフェンという解熱剤を使っています。特に、インフルエンザの場合は、より安全なものの使用をということで、第一選択薬に、アセトアミノフェン系の解熱剤の使用をすすめられています。アンヒバ座薬、アルピニー座薬、パラセタ座薬、カロナール(座薬、細粒、錠)などです。
熱の上がり始めは、解熱剤の効果も悪いことがあり、高い熱が下がりにくいことがあります。でも、すぐに続けて使用せず、8時間くらいはあけて使用することが好ましいです。その間は少しずつでも水分を補給し、頭や、頸の横、腋の下、ソ径部を冷やすこともいいことです。
インフルエンザの薬
現在、以下治療薬があります。
- A型に効くシンメトリル(細粒、錠剤)
- A、B療法に効くタミフル(ドライシロップ、カプセル)
- 吸入薬のリレンザ
これらは、体内でインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬で、病気の期間や症状を軽くする効果があります。また、ウイルスの数の少ない初期の段階で使用することが、より効果をまします。
小児用には、前者の2剤ですが、いずれも、乳児への投与は医師が慎重投与するように指導されています。1才未満のこどもさんがインフルエンザにかかった場合、医師と相談されて内服されるようにお願いします。
インフルエンザの検査薬
最近、インフルエンザの検査薬がさかんに使われるようになりました。インフルエンザの症状がでて48時間以内なら(なるべく早く)、薬剤も効果的です。
診断方法は、鼻の穴のぬぐい液をつかって検査をして、診断します。15~20分で結果がでますので、医師の診断の手助けになります。しかし、中には、陰性とでてもインフルエンザの時もあることがあり、診断については、医師の判断にしたがってください。
インフルエンザワクチンについて
ワクチンについて
Aソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)、B型の3種類が同時に、あるいは混在して、それぞれが毎年少しずつ変異して流行します。
株の決定は、WHOの専門の会議で選定された推奨株を参考に、日本の流行状況を予測し毎年5~6月にワクチン株が決定されます。
予防接種の量とスケジュール
- 1才未満 0.1ml (2回接種)
- 1~6才未満 0.2ml (2回接種)
- 6~13才未満 0.3ml (2回接種)
- 13才以上 0.5ml (1回接種)
乳幼児~学童は過去の感染の機会が少ないため2回接種、中学生になると過去において大概のインフルエンザには罹患(りかん)しているので、中学生の高学年以上は1回接種で可としています。ただし、受験生、医療機関勤務者、基礎疾患のあるものなどは、社会的に2回接種の適応となります。
予防接種の間隔,接種時期
原則的には1~4週あけるのがよいでしょう。より効果を高めるには、3~4週間隔が望ましいようです。
流行期間が12月~翌3月ということを考えると、12月までにすませたいですね。
1才未満のインフルエンザの予防接種について
厚労省の指導で6か月以上の乳児からということになっています。しかし、家族の多い家庭や、保護者の希望がつよい場合は、接種してよいと考えます。
もちろん、小児科の医師との相談の上、御検討ください。
インフルエンザワクチンの予防効果について
低年齢層の脳炎・脳症の発生抑制効果は極めて高いといわれています。B型ではやや劣るが、A型では70%の効果があると言われています。
卵アレルギーとインフルエンザワクチン接種
インフルエンザワクチンウイルスを増殖させる培地として生育鶏卵を使用する。しかしワクチンの製造課程で卵アレルギーの主体となる卵白、卵黄の成分が混入することはありません。接種する場合は、皮内テストをしてから行うことがあります。
インフルエンザワクチンの副反応
硬結、発赤、発疹、じんま疹、発熱、即時型アレルギーなどです。
一般的な予防接種の注意事項を上げておきますので、参考にしてください。
ワクチンの種類
- 生ワクチン・・・病原性を弱めたウイルス、細菌を接種することで抗体を産生させる。弱毒性。
- 不活化・・・・・熱処置、ホルマリン処理で病原性を無くしたものを接種
抗体獲得については、生ワクチンのほうがよいため、1回接種。不活化の場合は、抗体獲得が困難であるため数回の接種を行います。
予防接種のつきそい
後見人として責任とれるなどの条件をみたせば、保護者でなくても構いません。ただし、保護者の依頼できたかどうかの確認は必要です。
また、定期接種と臨時接種は、現行の予防接種法では保護者同伴でないと接種できないことになっています。
母子手帳について
乳幼児の予防接種は、かならず母子手帳必要です。母子保健法、予防接種法で、市町村が、接種時に母子手帳を持参することを知らせることになっています。
なお、ワクチンの記録は生涯保存しましょう。
ワクチンの余り
三種混合、日本脳炎、インフルエンザなど、日によっては、余ることがあります。しかしながら、バイエルに一度針をさすことで密封が損なわれるため、その日の内に使い切らなければ、残りは廃棄されます。
軽症の感染時の接種
熱がなく、鼻水、咳程度なら、接種可能とされます。
親が妊娠している場合の生ワクチンの接種
こどもの接種は問題ありません。むしろ、接種したほうがよいでしょう。
熱性痙攣の既往のあるこどもへの接種
- 単純型・・・1か月以上けいれんが無い場合は接種可能
- 複雑型・・・最終けいれんから3か月あける
てんかんのこどもさん
けいれんが3か月以上なくコントロール良好のものと、けいれんがあっても小児科医の判断で必要と判断されれば、接種可能です。
卵アレルギーの方
たいていの予防接種は可能です。場合によっては皮内反応をワクチン液でおこなったり、抗アレルギー剤を内服しながら接種を行います。
ただし、皮内反応を行う場合は、内服を一時中止して接種を行います。
注射のあとは揉んだほうがいいのか
もむことで、皮下組織の損傷をおこしたり、ワクチン液の皮下への拡散がおこり、激しいものとしては手先まで腫れるたりすることがあります。もむというより、接種部位を押さえるだけにしてください。
接種後の入浴は?
接種後1時間たって異常がないことを確認してから入浴しましょう。
接種したあとのスイミングスクールは?
スイミングは、中等度~強度の運動とみなされるので、当日はマラソンや競走などの運動とおなじく避けてください。
接種後の30分の経過観察の必要性は?
30分以内に重篤なアナフィラキシーショックが起こることが多いため、連絡、処置のできるようにしておくことが必要です。
夏風邪
夏にかかる風邪の総称で、高熱、頭痛、発疹、嘔吐、下痢などをおこしやすいのが特徴です。その中の代表的なものが、ヘルパンギーナ、手足口病、プ-ル熱(咽頭結膜熱)です。
ヘルパンギーナ
原因ウイルスは、コクサッキーA型ウイルスです。
突然高い熱がでて、のどの奥がいたくて食べ物(特に味の濃いもの)が食べられない、よく見ると、のどの奥が赤くなり、水疱がみられます。
高い熱も3~4日続くことがあり、その間は、解熱剤もあまり効果がないことが多く、しっかり水分をとらせてください。
咳や鼻水などはあまりみられませんが、たまに嘔吐や下痢がみられることがあります。
感染力は強く、潜伏期は3日くらいです。飛沫感染で、急性期から回復期までのおよそ1か月にわたり便からウイルスが検出されるため、感染期間は長期です。
手足口病
原因は、コクサッキーA16やエンテロウイルス71などです。
症状は、小水疱や発赤が、手掌、足、口の中にみられます。小さい子どもさんでは、お尻や膝にもみられることがあります。熱も出る人もいますが、出ない人もいます。
飛沫感染で、ヘルパンギーナと同じく、潜伏期はおよそ3~4日、急性期から回復期までのおよそ1ヶ月にわたり便からウイルスが検出されるため、感染期間は長期です。
全身状態がよければ、小児科医としては、通園・登校などはいいと思いますが、感染に関しては、それぞれの園や学校の考え方があり、直接、担当の先生にお聞きになるのがよいでしょう。
おたふくかぜ
原因は、ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスの感染です。
潜伏期はおよそ1週間。はじめは、どちらかの耳たぶの下のところが、固く腫れてきます。発熱は個人差がありますが、2~3日で下がります。顎の下も腫れることもあり、そうなると腫れがひくまで1~2週間かかります。
通常は、ほっぺたの腫れのみなので元気なのですが、痛みがある間は感染の危険性があり、登園・登校は禁止です。主治医の許可がでてから、登園・登校しましょう。
合併症としては、髄膜炎、睾丸炎、難聴などがあります。予防するには、予防接種があります(任意接種)。
咽頭結膜熱
原因は、アデノウイルスによる感染で発症します。
症状としては、高熱と咽頭痛、まぶたの裏の結膜が充血し眼脂がみられることもあります。高熱は4~5日続くことがおおく、約1週間前後で症状もおさまるようです。
治療としては、抗生剤が効かないので解熱剤や、結膜炎の治療が主ですが、咽頭の所見や血液検査で細菌の混合感染の可能性があれば、抗生剤を併用することがあります。主治医の指示にしたがってください。のどが痛く食欲もおちてきますので、水分の補給と、味のうすい刺激の少ない食べ物をとるようにしてください。
他の人への感染は、眼脂、咳、便からの感染が考えられますので、手洗い、うがいはもちろん、感染しているこどもさんのタオルは別にしておきましょう。